『残酷』をもっと読み込むために/巻末脚註・図書の家版 | |
『残酷な神が支配する』を更に深く味わうために、台詞などに登場する文学と音楽関係の「脚注」をつけてみました。 萩尾望都作品では、会話の中でふれられる、そのひとことがどういうイメージで語られているのかを確認するのも一興。 物語を一読され、その余韻を味わいながら目を通していただければと思います。 担当研究員:天野章生
『残酷』をもっと読み込むために 巻末脚註・図書の家版/インデックス text: プチフラワーコミックス『残酷な神が支配する』1〜17巻/小学館 ●台詞のキーワードから脚注ページにリンクします。 一覧したい方のために【脚注データ一覧】もご用意しました(少々重いので注意)。 1巻 2巻 3巻 4巻 5巻 6巻 7巻 8巻 9巻 10巻 11巻 12巻 13巻 14巻 15巻 16巻 17巻 |
no. |
|
|
|
|
|
1巻/表紙折り返し | 萩尾望都 | 「残酷な神が支配する」はアイルランドの詩人・劇作家 W.E.イェイツが、その自伝の中で言ったことばです。で、アルヴァレズという詩人・批評家が、著作『自殺の研究』(新潮選書・早乙女忠訳)の中で、この一文を引用し、"残酷な神"とは、自己破壊とか、自殺とか、死とか、そういうものだと述べています。 | タイトルの由来、ということで萩尾さんの説明。 |
|
2巻/p93 | チキチキ | 「ぼくらの名字おもしろいんだよ ぼくは ワーズワースってんだ 知ってる?」「そ!そ!"立て友よ!書を捨てよ!"だぜ!」 | ジェルミが同室になった友人達との会話(名前の話) |
|
2巻/p94 | ウィリアム
チキチキ |
「ぼくの名字はラムってんだけど、チャールズ・ラムって詩人がいるんだ」「恋もあった 友もいた すべて去ってしまったが」 | ジェルミが同室になった友人達との会話(名前の話) |
|
2巻/p94 | チキチキ | 「"残酷な神が支配する"だ!」「ウィリアム・バトラー・イェイツ 詩人だよ」「いやそれはイェイツがダダイズムかなんかの話でいってたんだよなー とにかくアイルランドの詩人だよ」 | ジェルミが同室になった友人達との会話(名前の話)同室になった4人が全て詩人の名前と同じである、ということで、ジェルミの名字”バトラー”では?ということで挙がった。 |
|
2巻/p157 | 教師 | 「先週からやっているロバート・ヘリックだが この"バラの蕾"はなんの意味で使われている? | 前日のグレッグの暴行の痛みを堪えてジェルミが受ける授業 |
|
2巻/p165,166 | イアン | シューベルト「菩提樹」「・・知ってるか?この歌 シューベルトだ」 | 授業中倒れ、声でなくなったジェルミをイアンがボートに乗せ歌う。 |
|
3巻/p16 | サンドラ
グレッグ |
「チャイコフスキーが好きなの」「きみに似合う"眠れる森の美女"にしよう」 | 週末の一家団欒。なごやか(に見える)談笑の中で。 |
|
3巻/p48,49 | 教師 | 「ポーの"黒猫"を読んだことのある者?」 | 授業で取り上げられたテキストとして。あらすじを知ってグレッグへの疑惑が浮かび、身震いするジェルミ。 |
no. |
|
|
|
|
|
4巻/p97 | ナターシャ | 「十代の心身症」著者アダン・Z・オーソン | グレッグによる性的虐待に気付いているナターシャがそれとなくジェルミに薦める本。類似タイトルの本がある。著者/キャスリーン・マッコイ 片岡しのぶ訳 『どうすればいいか 10代心身症』晶文社
紹介文より*どうしてこういうことになってしまったのか。子供たちは言葉にならない危険信号を発している。登校拒否、万引、暴力、家出、自殺……。今日、10代の彼らが苦しんでいる様々な問題をとりあげ、彼らが背負ってしまった心身症とはどういうものなのか、心をこめて分析・解説。「心を開いた者の耳には、彼らの声が聞えてくる」なだいなだ氏評。* |
|
5巻/p29,38,39
14巻/p23 |
ジェルミ | 「恋人はバラの花のよう 恋人は音楽のよう そうだこれはロバート・バーンズの詩だ・・」「ロバート・バーンズの"LOVE"」 | ナディアのことを思いながらジェルミが暗唱する詩。グレッグの誕生日祝いに朗読。他の人を思っていたことがグレッグの気に障り鞭打たれる。後半で回想としても語られる。 |
|
5巻/p145 | 教師 | 「コンサートの曲目はヨハネ受難曲とヘンデルのメサイア」 | クリスマスの行事の為の練習風景。イアンはチェロを弾く。 |
|
5巻/p145 | 教師 | 「コンサートの曲目はヨハネ受難曲とヘンデルのメサイア」 | クリスマスの行事の為の練習風景。イアンはチェロを弾く。 |
13 | 5巻/p170 | ジェルミ | 「いい子にしていようハレルヤ グロリア」「ハレルヤ!名も知らぬ鳥よ!12日だ!」 | グレッグの暴行に堪えながら、ジェルミの口から出る。*どちらも神を讃える言葉だが、ここではヘンデル「メサイア」の中の一節ではないかと。 |
14 | 6巻/p55 | グレッグ | 「ガレが半ダースあるというからね いいものだ」 | 実業家であるグレッグの仕事が窺える会話。 |
|
6巻/p174 | ジェルミ | ジェルミが部屋で手にしている雑誌。「WILDLIFE」 | 実在しそうな感じの雑誌なので探索中。 |
no. |
|
|
|
|
16 | 7巻/p76 | イアン | 「どうしたら"ばらの騎士"のような甘い恋愛ができるのかいまでも悩んでいる」「ベッドで夜明けのコーヒーを飲む話ですね」 | イアンはオペラに強いらしい。 |
8巻 | ||||
|
9巻/p69 | ジェルミ | 「ヘミングウェイが『キリマンジャロの雪』って小説を書いてる」 | すさんだ生活をしていても、以前に読んだ本の話が出てしまうジェルミ。 |
18 | 9巻/p90,91 | 教師&ジェルミ | 「明るい作家もいるぞ 「マーク・トゥエイン アーウィン・ショー サリンジャー」「ライ麦畑が?明るい?」「きみは本が好きなんだろ ハックルベリー」
「あんたライ麦畑のキャッチャーのつもり?」「サリンジャーの愛と悲しみのフーガについて語りあおう」 |
熱心な教師の会話にはからずも徐々に引き込まれるジェルミ。 |
19 | 9巻/p177
12巻/p141 |
イアン&ジェルミ | 「夢の・・イニスフリー・・」「遠い島で一人暮らしをする男の話さ ミツバチを飼いマメを育てて」「イェイツの詩だよ 孤独で美しい」 | 思わず二人同時に口にする詩のタイトル。街頭に立ち身を売るような墜ちた生活の中でもジェルミには、詩や文学を愛する気持ちが残っていて勉強したいという希望もやはりあるのだ。
/イギリスに戻って旅行中に蜜蜂に触れて同時に再び思い出す。 |
no. |
|
|
|
|
|
10巻/p90 | ナディア | 「わたしの下宿のベーコン・ヒルからも近いわ キーツの家があるはずよ」 | イアンがジェルミと住むために探した家。環境はかなり良いことが窺える会話。そしてここでも詩人の名が挙がり、彼らの興味が常に詩や文学、音楽とともにあることが分かる。(萩尾さんご自身の趣味の反映もあると思う。) |
|
10巻/p141 | イアン | 「そう夏の夕べのピクニックだ」「なにを演るの?」「合唱入りの"真夏の夜の夢"」 | イアンがジェルミをロンドン・フィルの野外コンサートに誘う。ハムステッド・ヒースのケンウッド・ハウス。ナディアの家族と。ここからしばらくイアンのセリフに「真夏の夜の夢」が混ざっていく。 |
|
11巻/p133 | エリック | 「ワルキューレだよ」 | バレンタインと双子のエリック。バレンタインとの関係は"ワルキューレ"だよ、と謎めいた言葉を残す。帰ってワルキューレを聴くジェルミ。この歌劇の内容はエリック=バレンタインの関係のキーになる。 |
|
12巻/p118 | ナディア
マージョリー |
「テレビよ"ある結婚の肖像"」「レズのお姫様が夫を捨てて女とかけおちするの」 | 自転車旅行のコースの相談の中でマージョリーが挙げる"シーシングハースト"その場所に行きたい理由がこれ。 |
24 | 12巻/p137 | ナディア
イアン |
「いつ来てもライはいいわ」「中世気分が味わえる」「アンナ・ボレーナの時代だわ」「ヘンリー・8世のオペラがなぜイタリア語なんだ」 | 自転車旅行でライに来て、ナディアが言う。 |
25 | 12巻/p137 | マージョリー | 「あたしヘンデルとグレーテルがいい」「魔法使いが焼き殺されるところが好き」 | 自転車旅行でライに来て、マージョリーが言う。 |
|
12巻/p147,149 | ナディア | 「何度も何度もなぞる譜面 何度も弾くバッハのフーガのように知りたい」"あなたは音楽 これはバッハの平均律" | 自転車旅行中イアンとナディアの会話の中で。(イアンに抱かれるナディアの気持ちの中で) |
27 | 12巻/p163 | イアン | 「この坂が終わるまで旅は続くよ友よ」「なにそれ」「ロセッティの詩アレンジしたけど」 | 自転車旅行を二人で続けることになって、坂道を上りながらイアンが口にする。 |
no. |
|
|
|
|
|
13巻/p55 | 扉絵 | イアンがジェルミの首を抱え逃げるように走る構図。 項目20に挙げたキーツの作品「イザベラとバジルの鉢」を思い出す。 |
扉絵の中でも意味深い印象。 |
29 | 14巻/p67 | クレア | 「マザーグースでしょう?ストラビンスキーでしょう?アバも好きよあの子」 | 意識が戻らない状態のマージョリーに好きな音楽を聴かせてるというクレアのセリフ。 |
30 | 14巻/p93 | クレア | 「きのうはモーツアルトを聴かせてみたの」 | 見舞いに行ったジェルミにクレアが言ったセリフ。 |
31 | 14巻/p145 | ジェルミ | (ドンキホーテじゃない…サンチョパンサ…) | バレンタインに会いに行ったジェルミが迎えに来た太った男の子(ロバに乗ってる)を見て心中思うセリフ。 |
32 | 15巻/p48 | クレア | 「りんごのペーストよ 白雪姫だわ」 | 食事として与えたりんごのペーストをのどに詰まらせたマージョリーのことを説明するクレア。 |
33 | 15巻/p152~157 | イアン | 「カリンカ!」 | ナターシャがバラライカを弾くのを聴いて突然子供の時聴いた歌にまつわる記憶が蘇るイアン。 |
34 | 15巻/p167 | イアン | 中世の落陽も日の出も感じることができる 霧のたつウインダミア マクベスの住むコーダー城 角笛の響くローモンド | ジェルミと離れ一人受験勉強の合間に自転車で国内を回るイアン。 |
16巻 | ||||
35 | 17巻/p19 | ルールー | 「あんたいくつ?ナルニアだかエンデだかファンタジーいう?」 | ジェルミとはぐれたマージョリーが言った言葉に同行したルールーが言う。 |
|
17巻/p55 | ナディア | 「…わたしコルボのバッハが好きなんだけど」 | イアンに会いオルガンについて聞かれて話に出る。 |
37 | 17巻/p61 | ヨルク | 「彼女はバッハのクラヴィーアを弾いた」 | ナディアへの求愛を胸に追っかけてきたヨルクが語る最初の出会いについて。 |