お金持ちのハワードさんが下町で手に入れた「飛ぶ子ども」ジル。ハワードさんはさっそく客人にその姿を見せて自慢しようとするが、ジルは一向に飛ぼうせず、母の元に返してとせがむ。業を煮やしたハワードさんがジルを一生閉じ込めると脅すと、ジルは「ただの子どもはみんな飛ぶんだ」という言葉を残し、空のかなたに飛んでいってしまう。取り残されたハワードさんは、ジルにあやまろうと、自分の誕生日にジルとただの子どもを大勢招待するべく新聞広告を出すが…。イギリス留学後の復帰第一作、メルヘンチックなファンタジー。

輪の島に住む少女リマノは、赤い星との戦争に旅立った恋人ラモンの帰りを待ちわびていた。春先に二人が出会った一頭のユニコーン〈一角獣〉。決して人には慣れることはないが、未来の夢を見せてくれるというユニコーンに、リマノは「あの人が帰ってくる未来を見せて」と願いを寄せる。しかし、ユニコーンが彼女に見せた夢は…。

物語はドイツのとある全寮制ギムナジウムの生徒トーマの投身自殺から始まる。トーマの死に動揺する委員長ユーリの前に彼と瓜二つの転校生エーリクが現れる。思春期の少年達の葛藤と心的成長を繊細なタッチで描き、絶大なる影響を読者に与えた少年愛漫画の草分けでありバイブルのひとつ。連載当時、人気低迷による中断の危機を「ポーの一族」単行本の大ヒットが救った逸話は有名。映画化（「1999年の夏休み」）、戯曲化（スタジオライフ）もされている 。

両親の再婚で、ジョゼは校内で魔性の美と称されるランジュと兄弟に。ジョゼの田舎で夏の休暇を満喫していた二人だが、廃墟となった温室に足を踏み入れた時、枯れたバラのつるがランジュに巻きついてきた。脅える彼をジョゼは笑ったが、ランジュは自分を呼ぶ何者かの気配を感じ、再び一人で温室を訪れる。初期のホラー作品。

memo：
ポー・シリーズ第２期「エヴァンズの遺書」「ペニーレイン」のすぐ後に発表された。講談社から小学館に発表の場を移し『少女コミック』を中心に執筆していた萩尾が他誌にも描くようになった初めての作品。［小西］

売れないバンドの歌手グラン・パは、ひとりの薄汚れた子どもを街角で拾う。そばかすで青い目の、少し頭が弱く見えた“リュー”。彼女はドン・マクリーンの「アメリカン・パイ」をいつも口ずさんでいた。ある日、ライブハウスの前座に出たリューは自分の想いをメロディにのせ、その歌声の美しさに皆は驚く。しかし彼女は舞台で体調を崩し、彼女を診断した医者からは思いがけない事実が知らされた。

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ギリシャのアテナイに住むプラトンは、アトランティスの古文書に「オリハルコン」という謎の金属が記されていることに興味を持つ。その子孫が住む村で 自分が“道標”だと告げられたプラトン。「オリハルコン」の力により彼の意識はアトランティス司政官・オリオナエと重なり…。釈迦、キリスト、ユダ、そして少女の姿の阿修羅王。壮大な物語の幕が開く。

memo：
SF作家・光瀬龍の1967年刊『百億の昼と千億の夜』の漫画化。萩尾にとって初の週刊少年誌での連載作品。［小西］

150ページ（プチフラワーコミックス）

204ページ