萩尾望都先生「チープな素材のディープな内実」講義/拝聴レポート
■2002年1月10日(木)14:40〜16:10/京都精華大学 黎明館L-101
下記は当サイトの小西と城野が講義を聴講し、まとめたものです。
内容・掲載に関しては京都精華大学の了承をいただいています。
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小西●では次に、会場からの質問に萩尾先生がお答えくださった30分をご紹介です。全部で13のQ&Aがあったわけですが・・・いやあ、萩尾先生って全ての質問に、すごく考えて誠実に答えてくださるので、そのやりとりを聞いてるだけのこちらも恐縮してしまいました(笑) 城野▲質問する方々の話に、一生懸命耳を傾けて答えを模索している先生には頭が下がりました。質問を要領よく投げるというのは、とても難しいと思いましたね。記者やインタビュアーって凄いお仕事だね〜。 |
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小西●それから実際に描かれる学生さんからの質問で、漫画を描くときには、読み手側の眼球運動を考えながら描かないと思うんですが〜という質問があって。この質問は今回、素晴らしかったよね!?(笑)
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城野▲他にも紹介したいことはあるのですが、流石にこの辺にしときましょうか〜。 小西●異様に長くなってしまいますねこれは(笑) さて今回、城野研究員が心に響いたところを特に上げるとすれば、どのあたりですか? 城野▲萩尾先生は、漫画という文化を本当に愛していらっしゃるんだなァと。特に構成、リズムの掴み方の説明をされているときや、好きな漫画を数え上げているときの熱の入れようが〜まるで女子高生のようでした(笑) 小西●ホントですね〜。 ラストでもさらに証明してくださいました。 物語というより作者のつぶやきのようなものが増えている気がする最近の漫画について、(物語を重視される萩尾先生は)どう思われているのでしょうか?という質問に、どんなお答えが返ってくるかと耳をすませたら「うーん、最近私が読んではまっているのは実は『ヒカルの碁』なんです(*2)」と。これ、どうでした〜? ジョウノさん(笑) 城野▲漫画なら足が上を向いて“どてん”ってひっくり返ってますね。以心伝心かーって(勝手に言っている) 小西●以心伝心(笑)・・会場のどっと湧いた爆笑の渦の中、私は思わず後ろのジョウノさんの手を取りたい衝動に。『ヒカ碁』好きの私たち、心臓はバクバクだわ頭で鐘は鳴るわ(実際に終業チャイムも鳴ってたんですけど)。同じ状態に陥った方も会場には多くおられたのではないでしょうか。しかし、ほんとに萩尾先生って、本当に漫画がお好き。これについては今までも認識はしていたけど、目の当たりにするとやはり感慨が・・(感慨ばかりですが)。 世界に誇れる日本の漫画家の第一人者である萩尾先生が、 まさに現役漫画ファンとしても第一人者であることを証明してくださった一瞬ではありました。
城野▲常に最新の漫画を読んでいるんですよねェ先生ってば〜本当にいろんなジャンルに渡って読んでいる。しかも小説やノンフィクションもお読みになるし、それが自分の好きなものと偶然ダブってたりすると嬉しくなっちゃうんですよねェ。あれだけ読んでたら1個や2個はダブって当たり前なんですけどね。やっぱ嬉しい。 小西●そうなんですよね〜。最近の漫画についての見解を聞かれて「とにかく漫画が好きで、自分で結構買って読んでいるし、うちにいただくものはくまなく読んでいます」とあえておっしゃるというのは、ホントにお好きでないとできないし、普通は作家としてのお忙しい身で、雑誌やコミックスを“くまなく”読むのはなかなか難しいと思うんだよね・・。ホントすごいよ・・・。 城野▲まさか先生の1日は36時間くらいあるのではないのだろうか・・・・でも、やっぱり他の漫画家さんの作品を見てその人の状態を推し量ったり、ついつい描き手にやさしい見方をしてしまうっていうのも・・・・漫画描き(しかも商業ベースね)にしかわかんない発言で(笑)面白かったです。 小西●『ハッピー・マニア』(安野モヨコ)や『舞姫(テレプシコーラ)』(山岸凉子)の名前もあがりましたね。 城野▲最新の漫画を読むから、それを好きでいられるから、常に新しい漫画を描くことが出来るんでしょうね〜。 小西●そうそう、今後のご予定のことも質問で出たのですが、「今年の6月から仕事に入る予定だが、まだ未定」「まだ人に話す段階ではないけれど、SFとか、観念的なものとかを描いていきたいなと思います」と。まだ半年、お休みがあるんですね・・長いです。 城野▲長いですが、待つ甲斐もありますね。 「ちょっと根が暗いもので(作品を)考え出すとどうしても(物語が?)暗くなってしまう」ともおっしゃってましたけど、先生ってばどんなに暗くても笑いを入れるくせに〜そんなとこが好きなんだー! 次回作も楽しみ。 小西●ということで脱線も多々ありましたが、萩尾先生の講義&質疑応答の1時間半をご紹介致しました。最後になりましたが、こんな貴重な講義を一般に公開してくださった京都精華大学さんに、心から御礼申し上げます。もし可能ならば、萩尾先生の第2回講義をぜひ。更に可能なら、会場で色々取り仕切って(?)おられた山本順也さん(*3)や、最前列におられたマット・ソーンさんなど精華大の先生方との座談会とかもお聞きできたら・・・ぜひご一考をお願いします!・・・と、アンケートに書けばよかった。しまった。 城野▲本当にありがとうございました。もっとコアに漫画家さん同士で制作話とかもワタシはうれしいです。 小西●あ、それもお聴きしたいものだなあ。竹宮惠子先生も京都精華大におられるわけですしねえ。 小西●城野▲萩尾先生、本当にお疲れさまでした。 小西●また関西にもいらしてください〜〜〜。お待ちしてます!! 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 また、この素晴らしい講義を企画してくださった京都精華大学、 講師の萩尾望都先生にも深く感謝いたします。 この講義が行われた京都精華大学のホームページはこちらです。 illustration by Fusami Jono 注) 1: 鳥図明児先生はトレードマークの白い帽子に白いお洋服。自画像そのままでお元気そうでした。たぶんご一緒だったのは旦那様ではないでしょうか。鳥図先生の双子の妹さんも象田透児(しょうだとおる)の筆名で漫画を発表されていました。 2: 『ヒカルの碁』(原作:ほったゆみ/漫画:小畑健/監修:梅沢由香里四段(日本棋院)/週刊少年ジャンプ連載中)日本中の小中学生を中心に囲碁ブームを巻き起こしている大人気作。2000年第45回小学館漫画賞受賞作品。 3: 山本順也さんは、元・小学館「プチフラワー」編集長。現在、京都精華大学にて教鞭をとられておられます。当日は赤いロングマフラーをさっそうと(まるでミロンさんのように)。 |
担当研究員:小西優里、城野ふさみ
初回アップ:2002/2/5
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