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No. 03 研究テーマ
なぜ彼女はすぐ足を上げたがる?〜萩尾的“ダンス表現”の系譜1969-2000〜
これもダンス、あれもダンス??
―69年から71年まで―
小学館から出版されている萩尾望都作品集は旧版(赤本)と新版(白本)でページが異なります。
今回の研究には新版を使用しています。
■印のコメントはダンスとは直接関係ないですが、
その作品の表現面でのポイントです。あわせてお楽しみください。
1969年
そのかわりドタバタと変なポーズをとっている人物が大勢登場する。
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★ふわふわと飛んだケーキが“ぱん!”とわれる〜手塚治虫直系のモブシーン
1970年
記念すべき「萩尾ミュージカル」の第1作。 萩尾ミュージカルの要素は歌(詩のようなものの時もある)と踊り。画面の中で歌い踊ることで登場人物たちはその心情を表現してゆくのだ。それは意図してそうしたというよりも、自然に筆が進んだと思われる。
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★アンの前に現れた転校生ジョーイもまた、トランプを自在に操る。
「奇術は奇術 そうさタネがありしかけがある でもぼくのは魔法」
/P45-50
★ジョーイの家に行ったアンを待っていたものは…
「とびらが …ひらくよ …とびらがひらくよ」
1970年
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★ミスター・グレープルの家でクールキャットがピアノに合わせて歌う場面。
1970年
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★ディビーと爆発屋ジェイミーが鐘を鳴らすシーン。
引きつけのあるメインのポーズを、萩尾さんならではの動きの一枚絵で見せた初めての作品。この絵がなかなか思うように描けず、何枚も書き直したというエピソードもご自身で語られている。(CD-ROM「サンクトゥス」参照)
1970年
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1970年
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★扉絵でミュージカル風ポーズ
1971年
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■少女を小鳥に見立てた幻想的なイメージカットもダンス的。
■「雪の子」は後の萩尾さんのイメージを象徴する“美しい少年”というモティーフが初めて登場する作品。
1971年
当時の少女漫画界において、この独特の内省的なキャラクターとしての少年の描かれ方は非常に画期的であったと思われる。この作品で初めて少年同士の関係(この作品では実際は少女だが)というものが提示される。
そして同じく71年の後半には少年たちを描いた名作「11月のギムナジウム」が発表される。
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★女の子の姿に戻った主人公エミールの決めポーズがレベランス的
1971年
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★ジェニファとロンリーのダンスシーン
1971年
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★ダーナが空を飛ぶシーン。
/P149
★「精霊狩り」といえばこのカットを思い浮かべるひとも多いだろう。カチュカとリッピが唐突に足を上げて踊る。ここでこのポーズを取る必然性は、ミュージカルだからという以外にない。(ちなみにカチュカのモデルは竹宮恵子、リッピは増山のりえのイメージであり、大泉サロン時代が彷彿とされる)
/P82
1971年
ダンスシーンはないが、それに等しい動きがみられる。
物語としては地味だが、画面の視点の上下垂直の構造がドラマティックに演出されている。
この時期の萩尾作品で大きく扱われるポーズの数々は、当時の少女漫画に求められ、皆が描いていた、話の流れとは関係ないファッションポーズやお姫様絵ではなく、
話に重要な、しかし冷静に見てみると変な動きの絵であることが多い。特にこの「白き森白き少年の笛」はクライマックスのP82も画面にお尻をむけている後ろ向き少年の落ち姿である。普通は大きく描かない(描けない?)アングルであろう。
しかし、それがなんとも魅力的でかわいらしく大胆で、萩尾の初期作品好きにはたまらない絵であることは間違いない。
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/P63
★森の木々がコマごとに左右に流れて踊る視点の変化〜絵のリズム感
/P64、65
★見開きぶち抜きの大ゴマ〜絵と言葉のリズム感
「だあれ?だあれ? あたし追っかけているのよ ちょっとだけ待って ねえ だあれ?」
/P70
★井戸に落ちそうになる少女をまるでリフトのようにかかえる少年
★井戸に飛び込む少年
■この作品で萩尾独特の“回想重ね描きヒトコマカット”が完成されたのではないか(作品集第1期4巻『セーラ・ヒルの聖夜』所収/P134)。
1971年
そのかわりに、殴る蹴るひっぱたく階段から落ちるといった少年の動くポーズがもりだくさん。抱きつくなどのからみのシーンもある。
それはさながら映画のフラッシュバック手法。
それまで物語で積み重ねたイメージを1コマで読者に見せてしまい、更にモノローグとも地の文とも判別つかない言葉を重ねることで、そのシーンにいっそうの深みと味わいを醸し出す。その詩情はため息がでるほどみずみずしい。
この手法は同じ年に先駆けて発表されている「塔のある家」(作品集第1期2巻所収/P120)にも試みがあり、「小夜の縫うゆかた」(作品集第1期2巻所収)は全編がそれといってもいいかもしれない。
このヒトコマをリズミカルに演出する手法も、広い意味での萩尾独特の変型ダンスシーンなのではないか・・・というのは、考え過ぎだろうか?
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★草原でエーリクにトーマがしがみつくシーン。この構図も普通はこうは描けない。
1971年
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★橋を渡り落ちそうになるキャロンを助けるクリス。大技である。
さてちなみにこの時期の世間の少女漫画は?
71年の主な発表作品: 大和和紀「モンシェリcoco」、池田理代子「桜京」、西谷祥子「不良先生」、のがみけい「ナイルの鷹」、 山岸凉子「アラベスク(第一部)」、竹宮恵子「ヒップに乾杯!」、美内すずえ「13月の悲劇」など |
資料作成:小西優里 / 作成日:1999/10/1 更新2001/4/7