小西:サブタイトルがいきなり変わっててさー。
卯月:うん・・・前回あのサブタイトルに意味が!と思っていたから「は?」だったけど。
小西:いきなり出てくる人もこのひと誰?だしね(笑)
卯月:でも「眠り姫」とみたとき「青羽のこと」だとは思った。
小西:マージョリーだねえ、眠り姫って。
卯月:そうそう、マージョリーも眠るよね。思考を停止すると眠る・・・身体活動も停止する。っていうのキマリなんだね。
小西:キリヤは?
卯月:キリヤはなんなんだかわからんが、シンクロするひとなんじゃないのかね〜青羽と。
小西:ほお、キリヤが?
卯月:いや〜だって意味なく美少年でてこないでしょう(笑)
小西:(笑)そっかな。黒髪の王子様かな。
卯月:眠り姫の王子は黒髪だったかしら。
小西:青羽は眠って待ってるわけだ、キリヤ王子様を。ところで「パラサイコ」ってなんだっけ?
卯月:超心理学だって。
小西:超常現象とか?
卯月:そういえば萩尾先生、ずいぶん前に次作はなにかについて書きたいとおっしゃってて・・・単語だけ思い出した。「ネオテニー」だ。
小西:「ネオテニー」ってどこにあったの?
卯月:『究極の10冊物語』のインタビューだから、だいぶん前のやつ。
小西:「ネオテニー」ってNeoteny。幼型成熟。なんかそれも意味深ですな。
卯月:「心臓を食べる」ってなんかあるんだっけ?
小西:「心臓を食べる」と不老長寿にいいって、インドで。
卯月:人魚の肉みたいなもんか、心臓。
小西:人の生きた肝臓と心臓を。前世療法のサイトで見たよ。
卯月:あと、あの島の形。
小西:手だよね。
卯月:だよね? 誰にでもそうみえるよね^^; 血のりのついた手形だよね。
小西:あ、そうそう、そんな感じ。
卯月:壁にべっとりついたやつ。父親のか母親のか自分のか・・あれは青羽が両親を殺したってことなわけ?
小西:どうでしょう。今月の『フラワーズ』は吉野作品も家族殺しだし〜。
卯月:スプラッタ流行り? なんだろうねー? あのサバイバルのも結構血なまぐさいし。
小西:でも、萩尾先生のバラと血が落ちてくるイメージはすごいねえ。視覚的だよね。
卯月:血の雨がふるのがこわかったですよ・・・だいたい、この研究所はなんで青羽の夢を分析しないといかんの?
小西:彼女を事件の参考人? 容疑者として・・・
卯月:起こしたいから? なぜ? どーせなんかあるんだ、どんでん返しが。
小西:この研究所が呼んだ渡会さんは、犯罪者の夢をスキャンできる人ってことだし。
卯月:パラサイコの研究所であって警察じゃないのに・・・超常現象の原因を知りたいから? なんかな〜あやしいよな〜。
小西:伊勢出てきてるし。
卯月:萩尾先生は休暇中に、遠軽にも伊勢にも行かれたんだろうね? 遠軽はまんが祭りみたいのがまたあったのかな? 伊勢は・・・。
小西:斎王まつり(笑)
卯月:その両方で海老を食べられたのだよ、きっと。
小西:そうかもねえ。
卯月:イアンもロブスター食べてるじゃない? きっとああいうのがお好きなんだろうね?
小西:うんうん。
卯月:私もイギリスで海辺にいったらロブスター食べようと思ってたんだけど、レストランのメニューに探せなくて。そしたらアメリカ人かなっていう夫婦がロブスター頼んでたのよ!
小西:(笑)
卯月:運ばれて行くお皿にロブスターのしっぽやはさみがみえて・・・“それだよそれ”って・・・だからナニってなんでもないんだけど。
小西:いや、なんかその状況がわかるような(笑)
卯月:それにイチジクなんだけど、これがイギリスで何度か食事に出てね。びっくりした。生のママではなかったんだけど。
小西:へえ、そうなんだ?
卯月:道端の果物の屋台に並んでいたりしてね。日本ではもうめったにイチジクを食べなくなったのに。一回目のとき、萩尾先生はイチジクもお好きなんだな〜と思ったんだけど。イチジクにもなんか意味がありそうだけどもね。
小西:今回の作品って、すっごく盛りだくさんな感じするよね。意味ありげにぎっちり詰まってる。SFだからかなあ?
卯月:なんでも意味あるっていったらこじつけられるから、探ってもしょうがないけどねぇ。作者の思ってもいないことまで勝手に意味付けしてたりするね、きっと。
小西:でも、無意識に描いてたとしてもなにかしら意味を見ちゃうよね、こっちは(笑) しかし、これほど色々わかりたい〜って思うものが描いてあるのに、全然わからんわ〜〜〜。
卯月:ところで、青羽=マージョリー説としたら。
小西:渡会氏も冒頭でキリヤを産む夢を見るっていうのがイアンだ・・・。
卯月:んー・・・同じモチーフが多いんだほんと。
小西:しかし、なんで、男の人が男の子を産むのか、という。
卯月:男の人はほんとは産む夢なんか見ないんじゃないかと思うんだけど、どう?
小西:色々解釈はあるんだろうけど生理的によくわかんないね、私は。
卯月:知らないこと、それにイアンみたいな若者が「産む」とか発想しないだろうなぁと。
小西:うん。萩尾先生がなぜそういうことを描くのかが、面白いなあ。
卯月:でも、渡会さんはイアンかっていうと、これがなんだかリンドンみたいで。
キリヤはジェルミか? ちょっと問題児っぽいし。
小西:キリヤってあの、青羽の写真のフクロさわっただけで感じるわけね・・・何かを。やっぱこれは、青羽の意識とシンクロなのかなあ?
卯月:キリヤの「希望はない」っていうのもジェルミの「愛を信じない」だっけ? あれに似てると思ったんだよね。
小西:ああ、なるほどね。
卯月:母親と暮らしててなにか不幸があって「自分の希望を言ったりしない」子どもになってるわけだ。希望は叶わないもの、と彼は思ってるのよ。
小西:でも、お父さんには会いたいから来たんだろうし、行くのやめればと忠告もする。いい子だよね。
卯月:そうそう、大人の前ではいい子しちゃう、ジェルミもそうだったけど。あぶないよね。
小西:けなげで辛そうだよ・・・
あとね、16才の青羽。先月号の雑誌表紙の女の子は青羽だよねえ?
卯月:青羽かなあ。あの髪の毛がなんか怖いよね・・・鳥の足みたいなんだもの。
小西:トリのアシ!?
卯月:そうそう・・・顔の左側の方は葉っぱみたいなんだけど、右側の長いほうが足みたいなの・・・。
小西:(笑)なんかこの女の子は植物化してるとは思うけど、そっか、トリのアシか。
卯月:鳥の足が青羽の方を掴んでるみたいに見えたのね・・・でもこれは・・・木の根っこかも!!
小西:それなら植物だけども・・・
卯月:『ハーバル・ビューティ』のマスターとか連想するよね。
小西:昔の萩尾作品で「花や草のようにというのは何にも気にかけないことらしい」っていう台詞があるけど。
卯月:どこでだっけ?
小西:『湖畔にて』。『トーマの心臓』の後日談の・・・
卯月:は〜、自然と一体になるってことかな。いいね。
小西:バルバラでの花や草もそういうことかなあ。そうだといいなあ。トリのアシじゃなくて〜(^-^;)
注1…ダ・ヴィンチ編集部『究極の10冊物語』(96年メディアファクトリー)※初出は『ダ・ヴィンチ』95年8月号(リクルート)
注2…『湖畔にて エーリク 十四と半分の年の夏』:『ストロベリーフィールズ』(76年新書館)所収の絵物語で『トーマの心臓』のエーリクとシドの後日談を描いたもの。その中でシドがエーリクに「わたしたちも夏中は花と草になろう」と言い、一緒に夏を過ごすエーリクが「彼の花や草のようにというのは何にも気にかけないことらしい」と思う。[p18-19]