最終更新日:2000/2/19

仮想書庫資料

仮想書庫資料 File No. 01
漫画読みのためのバレエ作品紹介(No.01-10)

  
バレエ作品紹介 01
真夏の夜の夢

1592〜8頃に書かれたシェークスピアの浪漫喜劇の代表作「真夏の夜の夢」のバレエ化。メンデルスゾーンがこの戯曲の為に書いた管弦楽曲「真夏の夜の夢」で振り付けられた。妖精王オーベロンと女王タイターニアがインドの少年をめぐって争ったことから惚れ薬を使って妖精パックが森に来たカップルを巻き込んで混乱を引き起こす。

プティパ版(1877) フォーキン版(1906) バランシン版(1962)
アシュトン版(1964)ノイマイヤー版(1977)ド・ウォーレン版(1981)など
*( )内の数字は初演年

音楽*フェリックス・メンデルスゾーン

原作*ウィリアム・シェークスピア

〜内容〜
アテネ郊外の深い森の中、妖精王オーベロンと女王タイターニアは美しいインドの少年をめぐって仲違いをする。オーベロンは妖精パックに命じて”眠っている瞼にその汁を垂らすと目覚めて最初に見た相手に恋する”という花を摘みに行かせ、いたづらを企む。そこに、二組の人間のカップルがやってくる。
相思相愛のライサンダーとハーミア。
思う相手に思われないデメトリアスと、その愛を拒むヘレナ。
オーベロンの命令でデメトリアスとヘレナをくっつけようと花の汁をヘレナに垂らそうとしたパックは誤ってライサンダーに垂らし、そこに躓いたヘレナにライサンダーが恋をし、2組の恋は更に混乱。
パックは更にやってきた職人ボトムの頭を驢馬に変え、女王の瞼に花の汁を垂らし驢馬頭のボトムに恋させるよう仕向ける。
一方事の収拾にオーベロンが霧を湧かせ、もう一度花の汁を使って治まるべきカップルになるようとりはからう。
その後、タイターニアは自分の恋の相手が驢馬頭のボトムだったことが分かり、オーベロンと仲直りしインドの少年を譲る。
パックはボトムを元の頭に戻す。
そして二つの幸福なカップルになった4人の恋人達。
オーベロンとタイターニアがクライマックスの抒情的なパ・ド・ドゥを踊りパックが最後に現れて幕。

 
バレエ作品紹介 02
こんぺいとうの踊り

バレエ『くるみ割り人形』の中の一つ。

(「くるみ割り人形」については別頁も参照のこと)
ドイツロマン派の作家ホフマンの原作を大デュマが『くるみ割り人形とねずみの王様』という題の童話に書き直したものを元にしている。
バレエの台本はマリウス・プティパ、音楽がチャイコフスキー。
チャイコフスキーの三大バレエ曲の一つとされ、完成度が高い。
「こんぺいとうの踊り」は王子に変わったくるみ割り人形とクララがおとぎの国でねずみの軍を蹴散らした後、祝宴の最後に王子とクララが踊るグラン・パ・ド・ドゥ。
チィコフスキーはこの音楽の為にミュステルが1886年に発明したばかりの珍しい有鍵楽器チェレスタや、ラッパやガラガラなどの玩具楽器も買い込み、特にこの楽章の魅惑的な効果を高めている。

 

バレエ作品紹介 03
青い鳥

バレエ『眠れる森の美女』の第三幕。音楽はチャイコフスキー。
メーテルリンクの「青い鳥」ではなく、『眠れる森の美女』の結婚式の場面から。

彼の三大バレエ音楽の一つ。(『眠れる森の美女』については別頁も参照のこと)
オーロラ姫とデジレ王子の結婚式の場面で、童話の世界が混じり合う。
「青い鳥」はメーテルリンクの「青い鳥」が思い浮かぶが、ここではドルノワ夫人の同名の童話によるもの。
内容はフロリナ王女と青い鳥に変えられた王子が、悪い妖精と良い妖精の闘いののちに結ばれるという物語。
はばたきを思わせる腕の動きと軽やかな跳躍で踊られる。
パ・ド・ドゥを集めたガラコンサートなどで単独で踊られることも多い。

 

バレエ作品紹介 04
白鳥の湖

チャイコフスキーが初めてバレエ音楽に取り組んだ作品。
悪魔ロットバルトによって白鳥に姿を変えられたオデット姫。
呪いを解くのは”永遠の愛”を得ること。
夜の間だけ元に戻るオデット姫の美しさに魅せられたジークフリート王子がその愛を誓ったが、ロットバルトの奸計によって姫にそっくりなオディールに愛を誓い裏切ってしまう。間違いに気づいた王子がふたたびオデット姫と今度こそ永遠の愛を誓い、悪魔の呪いに二人の愛の力が勝つ。(ラストは様々なバリエーションがある。)

ライジンガー版(1877) プティパ=イワノフ版(1855)
ゴールスキー版(1933) ニコライ・セルゲイエフ版(1934)
メッセレル版(1937) バランシン版(1951) ブルメイステル版(1953)
ヌレエフ版(1964) ノイマイヤー版(1976) エク版(1987)
*( )内の数字は初演年

音楽はピョートル・チャイコフスキー。
彼がボリショイ劇場から作曲を依頼されたのだが、依頼に先立つ4年前には既に着想があったという。彼は子供部屋でムゼウスの幻想物語を発見し、物語のイメージから「白鳥の主題」を書いていた。白鳥の乙女の伝説は、モスクワの芸術家サークルでも人気の主題だったという。
そのため台本のあらすじもまたチャイコフスキー自身によるものと考えれている。最初のバレエ化は音楽の完成度に比べて舞台関係者に恵まれず、失敗に終わっており、チャイコフスキーは自分の音楽のせいだと失意のためしばらくバレエ音楽から離れたほどだった。そして、埋もれていたスコアを見出し、再生させたのがプティパとその弟子のイワノフである。
チャイコフスキーが既に亡くなって2年目のことだった。
プティパは既に「眠れる森の美女」でチャイコフスキーとバレエを成功させており、彼の才能を高く評価していたので、失敗作とされていた「白鳥の湖」にとりかかったのだった。(その時、スコアは亡くなった彼の書斎でほこりにまみれていたという。)そして世に残る名作バレエが生まれたのだった。
バレエとして「眠れる森の美女」よりも先に世に出ながら、プティパとのこれの成功がなければ「白鳥の湖」さらには「くるみ割り人形」も世に残らなかったかもしれない。

〜内容〜
花嫁選びを翌日に控えた王子は、気が進まない中で独身最後の宴を催している。
村人達が帰った後、従者達と白鳥のいる湖に向かうと、そこで白鳥たちが次々と美しい乙女達に変わるのを見て驚く。弓を構えた王子は最後に現れたオデット姫のあまりの美しさに感動して弓をおろし、彼女の話を聞く。
彼女は悪魔に魔法をかけられて白鳥に変えられ、夜の間だけ娘の姿に戻れるのだった。魔法を解くには自分を心から愛してくれる青年が現れなければならない、と告げられ、王子は自分こそがその呪いを解くことが出来ると誓う。
しかし、翌日の婚約者選びの席で、悪魔ロットバルトとその娘オディールが登場したとき、オディールがあまりにもオデットに似ているので彼女と間違いオディールに愛を誓ってしまう。
絶望したオデットを自分の間違いに気づいた王子が追いかけ、再び彼女に永遠の愛を誓う王子。悪魔は二人の死を賭しての愛に破れ、魔法は解け、二人は永遠の幸福の国に旅立っていく。

おおまかな内容は上記だが版によっていろいろな形がある。
オデットとオディールは同じバレリーナが演じるのが普通だが、これはプティパ版の初演時、オディール役が最後まで決まらず、苦肉の策でオデット役に決まっていた当時第一級のピエリーナ・レニャーニが両方踊ったのが評判をとった為だったという。
レニャーニは初演数日後の3幕でグラン・フェッテを32回続けるという離れ業も演じきった。
同一人物が踊ることで女性の二面性を象徴するといった劇的な表現法を見出した点でもこの時の成功はバレエ史に残るものであった。

 

バレエ作品紹介 05
ジゼル

ジゼルは村の青年ロイスと愛し合っていたが、彼は実はシレジアの公爵アルブレヒトが身分を偽っていたのだった。事実を知ったジゼルは気を狂わせて死んでしまうが、愛を知らずに死んだ娘はウィリとなって、夜の森で通りすがりの若者を踊り殺してしまう。アルブレヒトはウィリ達がそうして一人殺す場面を見、次に自分が見つかるが、ウィリとなった後もジゼルは彼への愛のために、ひとりで庇い彼を救うのだった。

パリ版オリジナル初演 1841.6.28 パリ・オペラ座
振付 ジャン・コラリ ジュール・ペロー
音楽 アダルフ・アダン
台本 ジャン・コラリ テオフィール・ゴーティエ 
   ヴェルノワ・ド・サン=ジョルジュ

バレエ「ジゼル」を最初に構想したのはロマン派の詩人で伝奇作家、バレエの批評家でもあったテオフィール・ゴーティエ。
彼はドイツの詩人ハイネが仏語で書いた『ドイツより』の中のウィリの描写、”白い衣をまといその裳裾から妖気をつねにたちのぼらせる大気の精・・”に感銘を受け、ウィリの伝説をバレエにすることを思い立った。
そして、その構想を台本作家として成功していたサン=ジョルジュに話し、彼とともに最初の台本として仕上げた。
パリ・オペラ座に持ち込まれた新作はカルロッタ・グリジというバレリーナを得、彼女の内縁の夫ペローの協力もあって、見事な初演を飾り、新作としては息の長い9年間、オペラ座のレパートリーとされた。
その後、バレエ自体が衰退したフランスにおいて上演されなくなったのだが、初演を見ていたボリショイ劇場のアントワーヌ・ティテュスによって、初演の翌年ロシアでも上演されており、このティテュス版は長くペテルブルクで残り1884年、再びプティパによって息を吹き返した。
プティパはアダンの音楽にミンクス作曲によるヴァリアシオンを挿入したり、大幅な改訂を施したが、パリを始めヨーロッパ各地からアメリカ、オーストリアに渡って上演された。パリのオリジナル版は消失したが、このロシア版はこうして定着し、現在も世界各地で上演されているロマンティックバレエの傑作。

ハイネが本の中に書いたウィリの描写は、1822年にドイツの女流詩人テレーゼ・フォン・アルトナーが文芸誌に発表したスラブ民話によるバラード<ウィリの踊り>を引用したものであった。
それによるとウィリとは結婚を目前に死んだ踊り好きの娘達が、生前満たされなかった踊りへの情熱から、墓で安らぐことが出来ずに迷っている霊魂で、深夜になると森で群れ踊り、通りがかった若者を捕らえて死ぬまで踊り抜かせる。ゴーティエがバレエ化を着想したのも、この死してなお止まない踊りへの情熱、という伝説のもつ要素も大きかった。

〜内容〜
ドイツの農村。寡婦ベルトの娘ジゼルは青年ロイスと愛し合っている。しかしロイスは実はシレジアの公爵アルブレヒトであり、戯れに村人になりすましていたのだった。その秘密をジゼルに横恋慕するヒラリオンが知り、彼はその証拠のマントと剣をつきつける。問いただすジゼルをなだめるロイス。
しかし、そこに本来の彼を知る狩りに来ていたクールラント公とバチルドが現れ、身分をもう隠しおおせない。ジゼルは彼の裏切りを知り、気を狂わせベルトの腕の中で息絶える。

深夜の墓場ではウィリ達が女王ミルタを囲んで踊っている。
愛を得ず死んだジゼルもウィリとして背中に羽が生え、一緒に踊る。彼女たちは通りすがった若者達を捕らえて踊りの中で殺してしまう精霊たちだった。
アルブレヒトがジゼルの幻影に翻弄された後、その場を去ろうとするが、そこでヒラリオンがウィリたちに取り囲まれて殺される恐ろしい光景を目の当たりにする。驚く彼を一人のウィリが見つけ、次は彼の番だ。
しかし、ウィリとなりながらもやはり彼を愛するジゼルの手で救われる。
そこへ彼の従者と、クーラント公、バチルドが現れる。
暁が訪れ、ウィリ達が墓に戻っていき、ジゼルもまた墓に消えていくが、彼女はアルブレヒトにバチルドを指し示し、愛を彼女に与えるよう望みを示す。
アルブレヒトはバチルドに手を差し伸べ、哀しみに堪えかねて昏倒するところで幕。

 

バレエ作品紹介 06
眠れる森の美女

ペローの童話『眠りの森の美女』のバレエ化。誕生パーティに招かれなかった魔女の呪いによって100年間眠り続けたオーロラ姫を、デジレ王子がキスで起こす。二人の晴れやかな結婚式と、童話の世界が融合したバレエ。

プティパ版(1890) ニジンスカ版(1921) 
ニコライ・セルゲイエフ版(1939) ヴァロワ版(1949)
コンスタンチン・セルゲイエフ版(1952) ヌレエフ版(1966)
マクミラン版(1973) グリゴローヴィチ版(1973) ハイデ版(1987)
*( )内の数字は初演年

このバレエの原作はフランスの童話作家シャルル・ペローということになっているが、ドイツのグリム童話にも「いばら姫」という相似の物語が収められている。グリム童話は言語学者であるグリム兄弟が民話の蒐集をしてまとめたものであり、ペローの物語ももともとは、昔から語り継がれた民話を元に書かれたものである。
この童話のバレエ化を思い立ったのはロシアのマリインスキー劇場の支配人、フセヴォロジスキー。19世紀末のロシアにあって、バレエは全盛期を迎えており、その頂点にふさわしいものとして、このバレエは豪華絢爛なものになった。
フセヴォロジスキーはマリウス・プティパと共同して台本を書き上げると、音楽をチィコフスキーに依頼した。彼は「白鳥の湖」の失敗で13年間もバレエ音楽からは遠ざかっていたのだが、この依頼を受けて再び精力を注いだ。
素晴らしい音楽を得て成功したバレエだが大作であり舞台装置や衣装が豪華なため、上演は難しいとされながらも現在でも多くの演出家の手によって上演され、愛され続けている。

〜内容〜
オーロラ姫の誕生の祝いの宴に招待されなかった悪の精カラボスは、そのことを恨み怒りもあらわに現れると「姫は16才の誕生日に糸紡ぎの針に刺されて死ぬであろう」と恐ろしい呪いをかける。
善の精リラが呪いを薄め、「姫は死ぬのではなく100年の間眠り続けることになるであろう」と予言する。
王と王妃は安心したものの国中から糸紡ぎをなくすよう命令する。
順調に成長した16才のオーロラ姫。
誕生日を祝う宴で4人の貴公子が求婚の踊りを繰り広げる。
そこへ場違いな老婆が現れ、姫にバラの花束を贈るが姫はその中にあった針に刺されて倒れる。老婆の正体はカラボスだった。
リラの精は宮廷全体を深い眠りに包んでいく。
100年の歳月が過ぎ、リラの精に導かれたデジレ王子がいばらにつつまれた城で姫を見出し、口づけをして眠りを覚ます。
宮廷全体が目覚め華やかさと明るさを取り戻す。
オーロラ姫とデジレ王子の結婚式の場面は童話の世界と華やかな宮廷の世界が混ざり合う。「青髭公」「長靴をはいた猫」「青い鳥」「赤ずきん」などなどが次々に登場した後、成長したオーロラの気品と風格の象徴とも言うべき、宝石の精たちの踊りが入り、最後は姫と王子のパ・ド・ドゥ。
踊り終えた二人の頭上にリラの精が現れ幕。

 

バレエ作品紹介 07
海賊

バイロンの詩劇から着想されたバレエ。海賊コンラッドとギリシアの娘メドゥーラの恋を中心にした活劇。

マジリエ版(1856) プティパ版(1863)
*( )内の数字は初演年

原作はイギリスの詩人ジョージ・ゴードン・バイロンの詩劇「海賊」。
だが、バレエ化にあたって大幅な変更が加えられ、ほとんど主要人物の名前を残すのみとなっている。
振付も様々な改訂があったが、現在上演されているものはプティパ版を原典としている。
全幕の上演は稀であり、男性舞踏手の見せ場も多いのでガラコンサートやコンクールなどでパ・ド・ドゥが単独で取り上げられることが多い。
音楽は アダン、プーニ、ドリゴ、オリデンブルグスキー

〜内容〜
海賊コンラッド、アリ、ビルバンドの3人は嵐の海で遭難し、浜辺に打ち上げられる。彼らを助けたギリシアの娘達の一人、メドーラとコンラッドの間に恋が芽生えるが、娘達は追ってきたトルコ軍にさらわれ奴隷商人に売られてしまう。競売にかけられたメドーラを商人に変装したコンラッドが競り落とそうとするが、不審に思った総督に追求され、海賊の姿を現しメドーラと娘達を奪い去って海へ逃げる。
海賊の隠れ家で娘達と宴の踊り。コンラッドは配下の反対を押し切って、恋人メドーラ以外の娘達を家に帰す。不満に思った配下二人は奴隷商人にそそのかされ、コンラッドに報復し、メドーラを連れ去りトルコ総督のハーレムに売る。そこへ海賊達が進入し、再びメドーラを救い出す。
ストーリー全体はあまり説得性がなく、海賊達の冒険譚という感じ。

 

バレエ作品紹介 08
シンデレラ

童話『シンデレラ』のバレエ化。

プティパ版(1893) 音楽 シェル男爵
ハワード版(1935) 音楽 ウェーバー
フォーキン版(1938)音楽 F・デルロンジェー
ザハロフ版(1945) 音楽 セルゲイ・プロコフィエフ
コンスタンチン・セルゲイエフ版(1946) 音楽 セルゲイ・プロコフィエフ
アシュトン版(1948)音楽 セルゲイ・プロコフィエフ 
ピーター・ダレル版(1979) 音楽 ロッシーニ
ロバート・ウォーレン版(1979)音楽 ヨハン・シュトラウス
ポール・メヒア版(1982)
*( )内の数字は初演年

題材としては古く、昔から数多くの版があり、使われた音楽も様々である。
中でも有名なプロコフィエフの音楽による最初の「シンデレラ」は1945年11月ボリショイ劇場で上演された全三幕七場からなるザハロフ版。
15日のドレス・リハーサルではシンデレラをウラノワ、王子はプレオプラジェンスキーが踊り、21日の初演ではレペシンスカヤとミハイル・ガヴォッチが主演した。
版によって内容もペローの童話に忠実なものと、現代版やコメディ版などさまざま。

〜内容〜
シンデレラは継母にこき使われ、家事に忙しく働いている。継母と二人の娘は招かれた宮廷の舞踏会に着ていくショールに刺繍をしている。
ふたりの姉はお互いに自分の方が美しく仕上がったと喧嘩を始める。
シンデレラの父親が帰ってくる。シンデレラと死んだ母親の肖像を眺めて話し合っていると継母達が現れ、肖像画のことで口げんかを始める。
口論が激しくなったところへ、乞食のおばあさんが物乞いにやってくるが、継母は彼女を追い出そうとする、シンデレラは自分の貧しい食事を与える。
おばあさんは感謝を込めて立ち去る。
仕立屋、美容師、宝石商などがやってきてにぎやかに3人の舞踏会行きの身支度が始まる。舞踏教師とバイオリン弾きが現れ、娘達はガヴォットの踊りの練習。そして、いよいよ舞踏会に出かけていき、シンデレラだけが取り残される。寂しげに見送ったシンデレラはほうきを手にとって舞踏会を夢見ながら踊り出す。そこへ乞食のおばあさんが再び現れる。老婆は実は善の妖精で。シンデレラにガラスの靴を与え、更に杖を振って、四季の妖精を呼び出す。
妖精達は個性的なヴァリアシオンを踊ってシンデレラに贈り物をする。
善の妖精は最後に「時計が12時を告げる前に帰らないと魔法が溶けるよ」と警告する。
宮廷舞踏会。美しいシンデレラに一同は目をみはり、魅了された王子はシンデレラの手をとって踊る。夢中になった為に警告を忘れたシンデレラはあわてて階段を駆け下りて靴を片方落としてしまう。
王子はその靴を頼りに彼女を捜し出すことにする。
世界中を旅する王子。シンデレラの町にもやってくる。
義理の2人の姉も靴を履こうとするが合わない。継母も履こうとするのを手伝おうとしたシンデレラのポケットからもう片方の靴がすべり落ち、王子はみすぼらしい姿をした彼女こそが昨夜の姫であることを認める。
そこへ乞食のおばあさんが現れ、二人の手を固く合わせる。
最後は王子とシンデレラが幸福に踊り幕。

 

バレエ作品紹介 09
ロミオとジュリエット

シェークスピアの戯曲『ロミオとジュリエット』のバレエ化。
いがみあう二つの名家のいざこざに巻き込まれて、愛し合いながらも命を落とすことになったロミオとジュリエットの悲劇。

ルッジ版(1785) 
ガレオッティ版(1811) 音楽 シャール
ニジンスカ=バランシン版(1926) 音楽 コンスタント・ランバート
プソッタ版(1938) 音楽 セルゲイ・プロコフィエフ
ラヴロフスキー版(1940) 音楽 セルゲイ・プロコフィエフ
チューダー版(1943) 音楽 フレデリック・ディーリアス
バルトラン版(1950) 音楽 ペーター・チャイコフスキー
アシュトン版(1955) 音楽 セルゲイ・プロコフィエフ
ジョン・クランコ版(1958) 音楽 セルゲイ・プロコフィエフ
マクミラン版(1965) 音楽 セルゲイ・プロコフィエフ
ベジャール版(1966) 音楽 エクトール・ベルリオーズ
クルベリー版(1969) 音楽 セルゲイ・プロコフィエフ
チェルニショフ版(1969) 音楽 エクトール・ベルリオーズ
ノイマイヤー版(1971) 音楽 セルゲイ・プロコフィエフ
グリゴローヴィチ版(1978) 音楽 セルゲイ・プロコフィエフ
*( )内の数字は初演年

原作はシェークスピア(1564-1616)の代表的戯曲「ロミオとジュリエット」彼は20年の作家活動の間に37編もの戯曲を残しているが没後150年の1761年バレエ・ダグシオンの確立者ノヴェールがシュトゥットガルトで「クレオパトラ」を上演したのを皮切りに1785年ロンドンでル・ピク振付の「マクベスベネツィアでルッジが「ロミオ〜」を初めてバレエ化し、次第にバレエ題材に使われるようになった。
「ロミオ〜」は過去のギリシア物語や口伝をもとに1554年にマッサオ・バンデルロが書いた散文の仏訳から、アーサー・ブルックが英訳の長編詩を作った。それが「ロミオとジュリエットの悲恋物語」で、シェイクスピアの戯曲はこれを定本として1595年に書かれたものである。
使われる音楽の代表的なものはプロコフィエフのものだが、劇作家ピオトロフスキー、振付師ラブロフスキーの共作を得て1935年に書かれた最初のものは、共産国ロシア当局の要求を受けてハッピーエンドを余儀なくされ、バレエ史上稀に見る失笑を買う筋書きだったという。1936年のキーロフ・バレエ200年祭に上演される予定も酷評の末流れ、結局1938年、チェコスロバキアのブルノ国立劇場で、主演セムベロヴァ、プソタ振付により初演された。
この時筋書きも原作にそった悲劇に書き改められ、プロコフィエフは新たに終曲を書き、バレエは成功をおさめた。この成功でキーロフも上演に踏み切ることとなった。
現在までに数多くの振付が残され、「白鳥の湖」に並ぶ代表的なバレエとなっている。内容も版によって違いがある。

〜内容〜
早朝のヴェロナの街。ロザラインへの失恋を癒すためにロミオは一人さまよっている。明るく日が昇り街が活気に溢れ、彼が街角に姿を消した後対立するキャピュレット家とモンタギュー家の衆が出会い、お互いを口汚く罵りながら喧嘩になる。
両家はどちらもヴェロナきっての名家であるが、中世の身分的偏見からこれまでも血腥い確執を演じてきていた。広場を群衆が埋める。
モンタギューの甥ベンヴォーリオが仲裁に入るが、キャピュレットの甥ティボルトが現れて彼を激しく罵る。
二人の決闘。収拾のつかない混乱状態になったところで警鐘がなり、ヴェロナの太守エスカラスが広場に現れ、今後街の平安を乱したものは死刑にすると宣言する。
両家の衆は牽制しつつ引き上げる。
キャピュレット家のジュリエットは貴族パリスとの結婚を両親に命じられる。
次にキャピュレット家の晩餐会の場面。招かれた賓客に紛れて、ロミオはマーキュシオとともに忍び込む。
ジュリエットはパリスと冷ややかな態度で踊っている。
ロミオとジュリエットの目が合い、二人は惹かれ合う。
ロミオは教会のローレンス神父に愛を告白し助けを乞う。ジュリエットの乳母の協力もあって、秘かな結婚式を挙げる。
再び、ヴェロナの広場。
キャピュレット家のティボルトがロミオに決闘をしかけるが、ロミオは拒絶する。納得のいかない友人マキューシオがロミオの代わりに決闘を受け、後を狙われた卑怯なやりかたでティボルトに殺される。
理性を失ったロミオはティボルトに襲いかかり、殺してしまう。
ジュリエットの寝室の場面。初夜を過ごした恋人達が目覚める。
マンチュアに追放を言い渡されたロミオは旅立たねばならない。別れを惜しむパ・ド・ドゥの後、ロミオが旅立つ。
キャピュレット公夫妻がジュリエットにあらためてパリスとの結婚を強制する。ジュリエットはローレンス神父に助けを求め、一時的に仮死状態になる薬を与えられる。神父はロミオにその計画をしたためた手紙を送る。
仮死状態になったジュリエットの葬儀の場面。
親族たちが嘆きながら最後の別れを惜しんだあと、隠れ忍んでいたロミオがマントを脱ぎ捨てて暗闇から現れる。ロミオは神父の手紙を受け取れなかったため、真相を知らない。彼はジュリエットの冷たい体を抱き、毒薬をあおって自殺する。やがて仮死状態から覚めたジュリエットはロミオの遺体を発見し、彼の短剣で自らの胸を刺し、息絶える。
ローレンス 神父が駆けつけ、二人の遺体の前で両家を和解させ、幕。

 

バレエ作品紹介 10
ばらの精

フランスの詩人、ゴーティエの詩「わたしは薔薇の精、昨晩の舞踏会にあなたが連れていってくれた」から着想を得て作られた一幕の幻想的なバレエ。ニジンスキーが踊り伝説化している跳躍力を見せた演目として有名。

振付 ミハイル・フォーキン
音楽 マリア・フォン・ウェーバー
衣装・装置 レオン・バクスト
初演 ディアギレフ・ロシア・バレエ団 モンテカルロ
   1911年4月19日


音楽はウェーバーの「舞踏への招待」をベルリオーズが交響楽にアレンジしたものが使われた。
乙女の役が可憐な容姿でパリ市民に人気があったタマラ・カルサーヴィナで、薔薇の精がワスラフ・ニジンスキー。
ニジンスキーのずば抜けた跳躍力はこのバレエでいかんなく発揮され幕切れの場面では、そのまま跳び続けていくかのように見えたという。
マリー・タリオーニの再来かと評されたカルサーヴィナと、薔薇の精そのままのようなニジンスキーの、完成度の高い踊りはバレエ史に残るモノとなった。バクストデザインのピンクの薔薇の花びらを衣装一面に縫いつけたニジンスキーの衣装も素晴らしい。

〜内容〜
舞踏会から戻った乙女が、肘掛け椅子でまどろんでいる。彼女の手から舞踏会の思い出の一輪の薔薇が床に落ちる。夢幻の中で姿を現した薔薇の精が、華麗なワルツに乙女を誘い、二人はうっとりと踊り続ける。
曲の終わり、薔薇の精は消え去り、乙女が目覚めて幕。

★【バレエ紹介に関することわりがき】に参考文献等を載せています。


文責:天野章生 作成日:1999/9/14 最終更新:2000/2/19

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